第4章 まちの将来

1 まちづくりのテーマ

(1)新たなまちづくりに向けた考え方

 地域が真に活性化するためには、地域を構成する要素である「まち」、「人」、「産業」の3つがそれぞれ元気になっていくことが必要といえます。第2章の6「まちづくりに向けた主要課題」で取り上げた8つの課題についても、まちづくりの進め方や行政のあり方に関する課題以外は、すべてこの3つの要素に関わる課題であり、これらの課題を克服することが、活力あるくらしやすいまちづくりにつながります。そのため、新町のまちづくりにおいては、恵まれた自然環境や立地条件、豊かな人材などを活かしながら、これらの課題に的確に対応することで、活力ある地域づくりを目指します。

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(2)まちづくりのテーマ

 新町が魅力ある元気なまちとして発展していくためには、新しいまちが目指すべき目標を明らかにし、その目標に向かって地域の力を結集していくことが必要となります。そこであるべきまちの姿として次のテーマを設定し、地域の特徴や個性を活かした取り組みを展開するものとします。

テーマ

くらしの笑顔が広がる ぬくもりと活力と躍動のまち

○高度経済成長期、バブル期を経験した現代社会において、私たちの価値観は物質的な「もの」を追求することから自然や環境といった概念的な「もの」を追求することへと変化してきています。こうした時代にあって求められていることは、私たち一人ひとりが快適な環境のもと、ゆっくり流れる時間を実感しながら安心して充実した生活を営み、豊かな人生を送ることであると考えます。

○幸い、私たちが生活するこのまちは、緑あふれる森林と清流安平川、そして降雪が少ない気候の穏やかな自然環境に囲まれ、また、空港や港湾が近い距離にあり、鉄道網や高速道路が整備されているなど、産業面も含めて、他の地域に比べると立地条件も良く、恵まれた環境の中にあります。

○こうした恵まれた環境を最大限に活かし、私たち一人ひとりが日常生活を送るうえで不便や不安を感じることなく、笑顔のたえない充実した暮らしが実感できるよう環境を整備していくことが、今後のまちづくりにおいて最も重要であると考えます。

○豊かな自然と恵まれた立地条件そしてこれらの恩恵を受けた豊かな人材が生活する私たちのまちは、将来的な発展の可能性を秘めた夢のある地域であるといえます。一人ひとりが地域のぬくもりを実感しながら自己の可能性や個性を伸ばし、自立した人間としてその能力を最大限発揮することで、さらに暮らしが豊かになり、地域全体がパワーアップする。そんな活力と躍動に満ちた新しいまちを実現するため、将来テーマを
「くらしの笑顔が広がる ぬくもりと活力と躍動のまち」
とし、住民と行政との協働によるまちづくりを進めていくものとします。

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2 まちづくりの基本的な方向性(基本目標)

 将来テーマに向かっていくため、まちづくりの基本的な取り組みの方向性を以下のように設定し、その方向に沿って各種施策を組み合わせながら展開していくものとします。 なお、新町のまちづくりを進めるに当たっては、以下の3点を基本原則とし、常にこれらを念頭においた取り組みを行うものとします。

まちづくりの基本原則

1)この地域共通の財産である自然環境の保全と再生を最優先します
2)これまで地域で育まれてきた個性を尊重します
3)旧町の垣根を取り払い新しいまち全体としての発展を目指します

1 生活重視のまちづくり
~ いつまでも住み続けたい、安心して暮らせるまちの創造のために ~

 行政の最大の目的は住民の福祉の向上です。地域が発展するためには、住民のみなさんが満足する、本当に住んでよかったと思える地域づくりを進めることが重要であり、そうした地域は外部からみても活力があり、いきいきと見えるものです。そのため新町においては、みなさんの声を的確に把握しつつ、子育てがしやすい、いつまでも安心して住み続けられる総合的な暮らしやすさの向上を最優先としたまちづくりを進めます。

(1)うるおいのある快適なまちづくり

 新町の貴重な財産である豊かな緑や安平川などの清流の保全と創出に努めながら、自然環境と調和した循環型社会の構築を目指し、現在整備が進められている下水道の整備促進、ごみ対策や資源循環のしくみづくりに取り組みます。居住地域においては、既存公園の魅力向上、新たな公園・緑地の適切な配置、まちなかの緑化・飾花を促進し、うるおいとやすらぎのあるまちの創出に努めます。また、地域内の連携の向上を図るため、市街地と市街地、市街地と農村地域を結ぶ道路網の整備を図るほか、通信網の整備を促進し、人や情報の円滑な流れの確保や、移動交通手段の充実を図るなど、年少者や高齢者などの交通弱者でも移動しやすい環境整備に努めます。

(2)安心・安全なまちづくり

 安心して子どもを産み育てられるまちづくりを目指し、多様な保育サービスや相談機能などの子育て支援サービスの充実を図ります。また、住民間で子育てを支えあうしくみの導入についても検討し、地域をあげた子育て支援体制の確立に努めます。今後、障害を持つ方や更なる増加が予測される高齢者の対策については、住み慣れた地域でいつまでも暮らし続けられる環境整備を総合的に進めるものとし、保健・医療・福祉サービスの充実や役場庁舎や公共施設などのバリアフリー化を進める一方、地域の中で活動・活躍できる場や機会の拡充を図るなど、人々の元気や活力を引き出すまちづくりを進めます。また、地域における住民相互の支えあいのしくみの充実を図ります。地域の安心感・安全性に直接かかわる消防・救急・防災については、計画的な施設及び資器材の充実と救急救命士などの人的体制の強化に努めるほか、火山・地震・水害などの防災対策の充実を図ります。防犯・交通安全については、防犯灯や交通安全施設の設置など、安全性の向上のための整備促進と住民の防犯意識や交通安全意識の高揚を図り、地域ぐるみでの防犯・交通安全対策を進めます。

2 恵まれた立地条件を活かしたまちづくり
~ 多様な産業が花開くにぎわいのあるまちの創造のために ~

 新町は、国際空港であり、北海道の玄関口である新千歳空港と重要港湾である苫小牧港に近く、地域内には北海道横断自動車道のインターチェンジもあるなど、陸・海・空の交通拠点が利用可能な恵まれた条件を有した地域といえます。人口230万人以上の人口を抱える札幌都市圏まで直線距離で50kmあまりと近いことも新町の持つ大きな利点です。道内最大の消費地を間近にひかえ、食料供給を中心とした経済的なつながりや人的・文化的な交流を強化することで、この地域の活力向上を図ります。立地条件の良さは、比較的温暖で雪の少ない気候条件や豊かな自然環境と併せて定住地として高い可能性があります。また、産業面でも基幹産業である農産物の円滑でスピーディな流通が可能であり、千歳市などと比較すると安い地価は産業立地の面でも有利です。また、現状でも40万人程度の観光客が訪れているなど、観光面でも大きな可能性を秘めているほか、人口の増加や観光客の増加は商店街の活性化という点でも大きな起爆剤となり得ることから、こうした環境を最大限に活用したまちづくりを展開します。

(1)活力ある地域産業の育成

 新町の基幹産業である農業については、農業基盤整備を進め、農地の集約と集団化・共同化を促進し、持続可能な体制づくりを図ります。また、多様な品種ができるというこの地域の特性を活かした地産地消の推進や、札幌都市圏、千歳市・苫小牧市などの大消費地をひかえるという立地条件の良さを活かした、安全でおいしい、付加価値の高い農業の育成を目指し、自然環境と調和した産業として地域の発展を担えるよう支援します。工業については、道路網の整備や工業用水の確保を図り、新町の持つ立地条件を活かした最先端産業や研究開発型産業などの臨空都市型産業の立地をさらに進めます。また、地域の資源を活用した新たな産業の振興を図るなど、内発的な産業育成についても取り組みを強化します。商業については、多様化する消費者ニーズに対応するため、経営者の意識改善や経営能力の向上と商業・サービス業施設の新たな立地促進を図る一方、コミュニティ施設の立地も含めた空き店舗の有効活用方策についても検討するなど、商店街周辺に人が集まるしくみづくりを進めます。また、障害を持つ方や高齢者が買物しやすくなるように、歩道空間のバリアフリー化や移動手段の確保など、高齢化に対応した商店街づくりを支援します。観光については、年間40万人を超える観光客が町内で回遊・滞在するしくみの構築を目指し、観光資源の発掘と既存資源の魅力向上、特産品を活かした新たな名物の創出、滞在型観光拠点の形成など、地の利を活かした観光振興を図ります。また、地域に根ざした産業育成のため、各産業間の交流、意見交換の場づくりや新たな起業の支援など、多様な地域産業の振興を図り、雇用の場の確保に努めます。

(2)良質な住宅の確保

 新町は道内でも積雪が少なく、気候も比較的温暖であるほか、市街地周辺に緑も多いなど、居住地として多くの魅力を兼ね備えています。地域における雇用の創出を定住人口の拡大につなげるためには、安価で良質な住宅の供給が欠かせないことから、菜園付住宅などの地域の特性を活かした魅力ある宅地の造成を促進し、安定的に定住者の確保を図ります。老朽化した公営住宅については、世代間における交流が可能となるように子育て世代の若い方から高齢者まで、いずれの世代も暮らしやすい、多様なものへと計画的な建替えを進めます。また、空き家となった住宅に関する情報の収集提供を促進するなど、地域の住宅資産が有効に活用されるよう体制を整えます。

3 豊かなこころを育む学びのまちづくり
~ 住民一人ひとりが輝くまちの創造のために ~

 まちづくりは人づくりといわれるように、地域を活性化するためには、地域を愛し、地域において主体的に活動できる人材を育てることが一番の早道といえます。そのため、生涯学習社会の実現を目指し、学習のための施設の充実と文化・芸術・スポーツをはじめとする各種学習講座の充実を図ります。また、地域全体で子どもたちを見守り育てる体制の構築や、学校教育における個性や可能性を育てる教育を推進するなど、心豊かで多様な可能性を持った人材の育成を目指します。

(1)一人ひとりの個性や可能性を伸ばすまちづくり

 子どもたちがそれぞれの持つ可能性を伸ばし、個性豊かに成長することを目指すため、特色あるカリキュラムによる授業やボランティア教育、子育てに関する学習機会の提供や関係団体への積極的支援など特徴ある学校教育と社会教育を推進します。また、郷土の歴史・文化に根ざした学習や、ビオトープ (生物の生息空間)づくりなどの活動を通じた地域の自然とのふれあいを学習に取り入れるなど、郷土を愛するこころを育む教育の充実を図ります。

ビオトープ:
ギリシャ語の生命(バイオ=bio)と場所(トポス=toposu)を語源とする、ドイツ語のBio(生き物)とtop(場所)を合わせた合成語で、さまざまな野生生物が生きることのできる空間のこと。近年、自然環境保全活動の活発化に伴い、日本でも積極的にビオトープづくりが進められている。

(2)生きがいを持って暮らせるまちづくり

 地域において主体的に活動できる自立した個人の育成を目指し、住民一人ひとりが自分の興味に応じて様々な学習をすることができる生涯学習社会の実現に努めます。そのため、図書館などの中核的な学習施設の整備に努めるほか、各種学習講座の充実、講師となる人材の発掘・育成を図ります。また、生涯学習活動の一環として、地域ごとに行われる学習活動などへの支援や、様々な活動を展開する団体や個人間の交流促進のためのしくみの構築など、自主的な活動を促進するまちづくりを推進します。

4 住民と行政の協働によるまちづくり
~ 活気あふれるコミュニティが支えるまちの創造のために ~

 まちづくりの主人公は地域に暮らす住民一人ひとりであり、本来まちづくりは住民の総意に基づいて進められるべきものです。そのため、新町のまちづくりにおいては住民が意見を表明する機会を拡充し、その意見を施策に取り入れるしくみを整え、住民と行政との対話に基づく最善のまちづくりを進めていきます。

(1)住民参加のしくみづくり

 合併を住民参加型のまちづくりに向けたひとつの契機と捉え、行政施策全般における住民との情報共有化と意見表明機会の確保や施策への反映のしくみの構築を図ります。そのため、あらゆる機会、媒体を通じた積極的な情報公開と提供を行う一方、住民一人ひとりのまちづくりへの参画意識の高揚を図るための意識啓発活動を強化します。住民自治の考え方に基づく、地域の課題を地域住民が主体的に考え、解決するためのしくみとして、地域単位でのまちづくり体制の構築についても検討し、住民のまちづくり活力の積極的な導入に努めます。また、効率的で効果の高い行政を推進するため、地域の環境美化や公共施設の維持管理など、地域でできることは地域が担うしくみの導入についても検討するなど、地域と行政との役割分担の見直しを進めます。こうした地域単位での住民参画の単位となる地域コミュニティの活性化を図るため、リーダー育成やまちづくりのための勉強会の開催、多様な交流活動の促進など、学習や交流の中から新たな活力が芽生えるよう支援を図ります。まちづくり活動への女性の参画を促進するため、行政が設置する委員会や審議会、まちづくり組織などにおいて女性の意見が更に反映できるように努めます。

(2)効率的・効果的な行財政のしくみづくり

 合併による行財政の削減効果をより顕著なものとするため、効率的な情報収集・伝達を担う情報通信基盤の整備と職員数の適切な管理・配置を通じた組織の効率化を進めます。また、指定管理者制度やPFIなど民間活力を活用した事業手法や事業評価を導入し、効率的・効果的なまちづくりを進めます。一方、合併後も千歳市や苫小牧市をはじめとする周辺市町村との連携が欠かせないことから、広域行政の推進を図ります。

3 まちの将来構造

(1)将来都市構造

 新町が持つ地域特性や魅力を活かしながら、各地域が強く結ばれ、他地域とも広く連携しつつ、暮らしやすい、個性あるまちとして発展をしていくため、将来のまちの構造を以下のとおり設定します。

1.地区拠点

 国道234号沿線に連なる4つの市街地は、鉄道駅を中心に形成されていることから、鉄道とバス交通の連動による交通利便性の向上を図るとともに、公園・緑地などの都市基盤を整備しつつ、それぞれの市街地の特性を活かした拠点的機能が発揮できる、うるおいのある交通利便性の高いまちづくりを進めるものとします。

2.観光・レクリエーション拠点

 主要な観光資源である大規模公園や安平山スキー場、温泉などを観光・レクリエーション拠点と位置づけます。また、瑞穂ダム周辺地域や安平川上流地域などの自然環境を活かしたレクリエーション候補地についても将来的な拠点として位置づけ、学習や交流の場としての活用も進めます。既存の拠点については、新町を訪れる観光客を引き込むための新たな魅力づくりを行うほか、統一的なサイン施設(案内看板等)の整備など、新町での回遊を促すための施設整備をあわせて行います。

3.産業拠点

 新町の立地条件の良さを活かした工業団地群や北海道横断自動車道追分町IC周辺地区を産業拠点と位置づけます。既存の工業団地については、さらなる企業誘致を進めるほか、追分町IC周辺については、物流関連の企業立地用地として、また、地域物産などの販売と観光情報センターをかねた「道の駅」の整備を検討し、地域の多様な産業振興に結びつけていくものとします。

4.広域交流軸

 北海道横断自動車道は、新町と道都札幌をはじめとする道央主要都市、十勝圏や釧路圏など道東主要都市とを結ぶ重要な路線であることから、広域交流軸と位置づけ、その整備の促進を要望していきます。

5.地域間交流軸

 4つの市街地を結ぶ国道234号とそれに接続する道道、JR室蘭本線・石勝線を地域間交流軸として位置づけ、地域内交通の円滑化と周辺地域との連携強化のため、必要な整備や利便性の向上に努めていくものとします。

6.水辺の軸

 新町を縦貫する安平川や瑞穂ダムを持つ支安平川を水辺の軸と位置づけます。これらの河川については、市街地周辺のうるおいのある環境形成に資する貴重な自然資源として、水質の浄化と生態系の維持・回復に努めていくとともに、学習・レクリエーションなどの場としての活用も図ります。

7.緑の軸

 東部及び西部に広がる森林は、林業生産の場であるとともに、新町の近景・遠景として市街地にうるおいを与えているほか、貴重な森林資源・水資源を育むという重要な役割を担っています。このため、これらの森林を地域の緑の軸として保全していくとともに、交流や学習の場としての活用を図ります。

(2)将来土地利用方針

 将来都市構造を支える土地利用区分ごとの方針については以下のように考えます。

1.森林

 森林の持つ環境保全機能、水資源かん養機能、防災機能、景観形成機能などの公益的機能が有効に発揮できるよう、森林保全対策の充実と無秩序な開発の防止に努めます。森林の持つ保健・レクリエーション機能の活用や計画的な開発に当たっては、できる限り環境に影響を与えないよう配慮しながら適正な開発に努めます。また、これまで砂利などの採取に伴い伐採された森林の再生を図るため、積極的な植林に努める一方、苫小牧東部開発エリア内にあるまとまった森林については、森林等保全地域としてその保全と活用を検討します。

2.農地

 新町の基幹産業である農業を更に発展させるため、農業用水の確保を図りつつ、近代的農業に向けた生産基盤整備を促進するとともに、農業後継者の育成による遊休農地の活用など、農地の有効活用と高度利用を促進します。また、農地は農業生産の場であるばかりでなく、景観形成や緑のオープンスペースとしても機能しており、特に新町においては牧場や田畑の緑が地域を特徴づける景観となっていることから、合理的・計画的な集約化を図ることで、無秩序な農地転用を抑制しつつ、優良農地の保全を図ります。

3.住宅地

 既存の住宅地においては、駅周辺地区という立地条件のもとに築かれた都市機能を活かすとともに、道路網体系に対応した基盤整備と土地利用を進めます。また、下水道などの都市基盤の整備を計画的に進めながら、快適性や安全性を高め、安心して暮らし続けられる環境整備を図ります。なお、開発に当たっては、公園・道路・下水道などの都市基盤施設の整備を一体的に行うほか、公共施設の用地確保などによって、コンパクトでまとまりのある市街地形成を促進するととも に、地区計画の導入による緑豊かで統一感のある、まちなみ形成を図るなど快適な住環境の整備を促進します。 また、老朽化が進む公営住宅団地については、統廃合や用地の高度利用を図りつつ、計画的な建替えを促進し、高齢者や若年者をはじめ多様な世帯が暮らせる、まちなみ景観のモデルとなる住宅地の形成を図ります。

4.商業地

 追分駅周辺と早来駅周辺については、商店街内の低未利用地の有効利用、空き店舗対策、ポケットパークや駐車場の確保など、計画的な商業地の整備を促進する一方、新町の中核的な商業地と位置づけられるため積極的な商業・業務機能の集積を図るものとします。特に早来駅周辺地区は国道234号バイパスの整備に伴う商業地の再編が進みつつあるため、秩序ある土地利用がなされるよう適切な誘導に努めるほか、追分駅前については、ロータリーを持つ駅前広場の整備を図り、鉄道とバス交通の連携の強化を目指します。また、すべての商業地は、障害を持つ方やさらに進むことが予想される高齢化に対応するため、だれもが安心して買物できるバリアフリーな空間形成に努めるものとします。

5.工業地

 工業地については、今後も地域振興のため立地条件を活かした産業立地を促進することから、工業用地の需要動向を適切に判断し、周辺の自然環境や住環境への影響を十分に配慮し、計画的な確保を図ります。苫小牧東部開発エリアについては苫東開発計画に基づきつつも、社会経済情勢を勘案しながら、柔軟かつ長期的な視点に立った事業の促進を図るものとします。また、守田地区の道有地の有効活用については道との連携を図りながら、将来的な開発用地として検討を進めます。

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4 地域別まちづくりの方向

 新町が総合的に発展するためには、地域の資源を活かしつつ、各地域が連携しあい、様々な機能を補完しあうことで個性をさらに伸ばしていくことが必要です。そこで各地域のまちづくりの方向を以下のように定め、それぞれが持てる力を十二分に発揮できる環境づくりを進めるものとします。

(1)早来地域

活力ある産業と豊かな自然が調和する 職住近接型のまちづくり

 早来地域は軽種馬の生産や育成は全国でも有数であるとともにチーズの発祥の地という乳製品生産の拠点を支えてきた酪農業や肉用牛・豚などの畜産業、そして米、野菜、花きなどの多様な農業を基幹産業とする地域で、新千歳空港までは約15分の至近距離にある立地条件もあり工業立地も進む一方、6か所のゴルフ場、引退した有名競走馬を見学できる牧場などもあり、年間約30万人の観光客も訪れるなど、多種多様な可能性を秘めた地域です。今後も自然環境との調和を図りつつ、この恵まれた立地条件を活かした、新たな企業誘致の促進や地域内の観光資源を最大限利用した観光客のニーズに沿った観光づくりをし、地域経済の基盤をより一層強化します。また、公共下水道といった基盤整備による居住環境の向上、早来駅周辺の商業立地の促進、遊休地などの活用による住民サービス施設整備、既成商店街の再整備など居住地としての魅力の向上を図ります。

○ 地域の産業基地としての新たな企業立地の促進

 早来地域は産業集積促進地域にも位置づけられており、他の地域に比べ立地条件が優れていることから企業の進出も多く、今後も苫小牧東部地域にあっては段階的な計画に基づいて各関係機関との調整を図り、産業立地を進めていきます。また、北町工業団地においても自然環境に優しい企業の立地を促進し、就業の場の確保と定住人口の拡大を図ります。

○ 新町南部の商業拠点となる早来駅周辺地区への商業立地

 地域の中心である早来駅周辺地区については、商業的な空洞化が進んでいることから、国道234号バイパスの整備を契機として現道のコミュニティロード化を図りながら、魅力ある商店街形成とともに駐車場、コミュニティ広場、環境整備の充実と「早来物語街道:ショッピングモール化、パドック広場 」の商業機能の充実を促しながら魅力ある商店街整備に努め、まちの中心の顔として賑わい景観を創出していきます。
パドック広場:
馬の町にちなんで、競馬場にあるパドック(レース前に出走馬を歩かせファンに見せる場所)をイメージした公園。馬の形のモニュメントやベンチなどを設置する。

○ 居住地としての魅力向上

 早来地域は地域内に就業の場も多く、札幌市や千歳市、苫小牧市などの都市にも比較的近いことから、ベッドタウン的な住宅地の可能性を秘めていると言えます。そのため、現在整備を進めている公共下水道の整備をさらに推進するとともに、著しく老朽化している公営住宅の立替えをストック活用計画に基づいて進め、居住空間の広さといった居住水準と、高齢者などが安心して暮らせるバリアフリー化といった性能基準を高め、快適な居住環境の向上を図ります。

○ 回遊・滞在型観光を目指した新たな観光的な魅力づくり

 年間約30万人の観光客を地域内に引き込み、地域の中で有意義なひと時を満喫してもらうため、既存の観光資源の活用と新たな観光的な資源を発掘して、調和の取れた観光を目指します。郊外には道内で2番目に古い由緒ある温泉がありますが、著しく老朽化が進んでいるため利用客のニーズに沿った施設の再整備が求められおり、「やすらぎ」と「くつろぎ」のできる滞在型の温泉施設の再整備を民間活力を導入しながら検討を進めます。また、瑞穂ダム周辺についても有効な活用がなされていないため、水源地域の保全を図りながら自然と親しめる空間整備について検討を進めます。

○ 顔の見える畜産製品づくり

 早来地域の農業の一角である畜産を活かし、生産者の顔が見える安全でおいしい畜産製品の流通のしくみの構築を図ります。早来地域は畜産も盛んなばかりでなく、民間の食肉加工工場も立地していることから、畜産農家を中心として、地域で生産された原材料のみを使用した食肉、乳製品、食肉加工品などの畜産関連の生産物を「はやきたブランド」化するなど、畜産における地産地消を推進します。

(2)追分地域

コンパクトで便利な質の高いまちづくり

 追分地域は旧国鉄の機関区が設置されたこともあり、鉄道のまちとして発展してきた歴史があり、今なお鉄道文化として地域に根付いています。地域の産業としてはメロンやホワイトアスパラガス、長芋、花きをはじめ、米、小麦などの穀類、畜産などを中心とした農業が基幹産業であり、立地条件の良さは早来地区と同様ですが、工業用水の問題から工業立地はあまり進んでいません。また、追分地区では、国鉄分割民営化により人口が大幅に減少したことから、宅地開発や公営住宅整備など定住のための基盤整備が進んでいるのも地域の大きな特徴となっています。今後は、これまで築き上げてきた鉄道文化と居住環境の高さを活かし、魅力ある住宅地として買物などの利便性の向上に努めるほか、北海道横断自動車道追分町IC周辺における「道の駅」的な地域物産販売と観光に関する情報センター整備による地域観光振興、物流関連企業の誘致、札幌市・千歳市・苫小牧市などの大都市に近い地理的条件を活かした都市近郊型農業の推進を 図るなど、立地条件を活かしたまちづくりを推進します。

○ 質の高い住宅市街地の形成

 追分地域は市街地がコンパクトにまとっており、住宅地周辺に公共施設や商業施設が立地する居住しやすい市街地を形成していることから、下水道や公園・緑地などの都市基盤の整備、住宅地内の緑化や花いっぱい運動による飾花を通じた、うるおいのある質の高い住宅地の形成を目指します。また、計画的な公営住宅の建替えによるバリアフリーな住宅の整備を進めるとともに、宅地の販売状況、企業立地動向などを勘案しながら住宅用地の確保を的確に進め、定住人口の確保を図ります。

○ 追分駅周辺における商業集積の促進

 新町北部の中心市街地となる追分駅周辺地区については、商業基盤整備も行われているものの、商業施設の密度が低いことから、ポケットパークの整備やまちかどギャラリーの設置、深呼吸スポット の設置など、人が歩くための仕掛けづくりによる「まち歩き」を楽しめる環境づくりを行うなど、にぎわいの向上を図りながら商業・業務施設の立地を促進し、地域の中心としての求心力のある魅力の高い商業地の形成を図ります。また、追分駅前については、ロータリー型の駅前広場の整備を進め、鉄道からバス交通や自家用車などへの円滑な乗り換えができる環境形成を図ります。

深呼吸スポット(ウォーキングロード):
町民の健康福祉増進のため、ウォーキングルートを設定し、各ポイントごとに休憩施設(ベンチ・東屋)を設ける事業のこと。

○ 追分町IC周辺における産業・観光機能の集積

 今後、夕張~十勝清水間の整備が計画され、道央と道東地域を結ぶ大動脈となる北海道横断自動車道の追分町IC周辺地区については、物流関連企業の立地を想定した用地の確保を図ります。また、地域の地場産品や地域でしか食べられない名物を販売する「道の駅」の整備を図り、あわせて様々な目的で地域を訪れる観光客に周辺地域の観光情報を提供する観光情報センター機能を持たせることで、新町での観光客の回遊性を高めます。

○ 安全で質の高い持続可能な都市近郊型農業の育成

 大都市近郊という恵まれた立地条件を活かした都市近郊型の農業への転換を進めます。また、「食」への安全性が求められている現状を踏まえ、地域から排出される畜産糞尿などを原料とした有機肥料製造施設の研究及び設置検討、有機栽培による農産物の高付加価値を進めるとともに、「ルーキーズカレッジ 」をはじめとする農業後継者の育成策を強化するなど、持続可能な農業のしくみづくりを推進します。
ルーキーズカレッジ:
新規就農者の受入体制整備の一貫として、農業教育研修施設を整備し、農業後継者と新規就農者を合わせた研修を実施する事業のこと。

○ 鉄道文化や自然資源を活かした新たな観光的な魅力の創出

 追分地域では地域固有の文化である鉄道文化を象徴する施設として追分駅の西側に鉄道資料館の整備計画があることから、こうした計画を継承しながら鹿公園・安平山スキー場と一体となったレクリエーションゾーンの形成を図る一方、安平川上流域においては、造林事業の推進などにより森林資源の利活用を目的とした「グリーンダム 」の整備を図るなど、地域資源を活用した観光的な拠点形成を図り、新町での回遊型観光の形成を促進します。

グリーンダム:
樹木(森林)により保水力を高め、「森林ダム」とすることにより、水資源を確保しようとする事業のこと。

5 新町の将来像

 新町が目指す目標(将来テーマ)を実現するため、まちづくりの基本的な取り組みの方向性を打ち出し、地域の特徴や個性を活かした取り組みを展開していくことで、このまちが持つ潜在的能力が引き出され、以下のような地域課題を克服した夢のあるまちが実現化されます。

豊かな自然と調和した快適に暮らせるまち

○ 住みやすさを実現する環境が整ったまち

 住宅の集まる市街地地域や市街地周辺地域では下水道や合併処理浄化槽による排水の処理が行われ、快適な環境が整っています。身近な場所には子ども達が安全に遊べ、高齢者が憩える公園が整備されるほか、街灯や防犯灯が設置され、夜も安心して歩けるようになります。また、住宅地や地域間を結ぶ道路沿線の緑化により、緑と季節の花があふれるうるおいのある街並みが広がります。

○ うるおいのある住環境をささえる緑や水辺があるまち

 まちの周辺には森林の豊かな緑や農地の緑が広がり、安平川などの河川の水は美しく澄み、魚や様々な生物が暮らしています。また、グリーンダムと瑞穂ダムは自然と親しめる身近な場として一体的に整備され、子どもたちが自然の中でのびのびと育つ環境が整っています。

○ 多様な住まい方ができる住宅・宅地があるまち

 老朽化した公営住宅は、高齢者から若者まで、様々な家族構成に対応できるバリアフリーで質の高い住宅に建替えられているほか、低価格で良質な宅地も供給され、町外からの新たな転入者が増加するとともに、町内での住み替えがスムーズにできます。

誰もが安心して暮らせるまち

○ 高齢者や障害のある人でも元気に安心して暮らせるまち

 健康づくりのための軽スポーツが盛んに行われ、健康診断や健康相談なども充実しています。介護保険サービスをはじめとする福祉サービスも充実しており、地域にバランス良く整備された施設で様々な支援が受けられます。また、地域の中には気軽に立ち寄って茶飲み話や趣味を楽しめる場もあり、困ったことがあっても地域の中で相互に助け合う支えあいのしくみが整っています。

○ 安心して子育てができるまち

 子どもたちが遊ぶことのできる公園や子育てに関する様々な相談ができる支援センターが身近な場所にあり、安心して子育てができます。保育サービスも乳幼児から学童まで幅広く対応しているほか、住民相互で子育てを支援するしくみもあり、職業を持つ母親も社会に出て自分の能力を存分に活かすことができます。

○ 公共交通や買い物環境が充実したまち

 町内外への移動や市街地間の施設を巡回するための交通手段が充実しています。買い物の場となる商店街は、段差がなく、車いすなどでも移動できるように整備されています。また、商店街には多様な店舗があり、定期的にイベントが開催されます。さらに街角にはちょっと一休みできるポケットパークが整備され、楽しみながら買い物ができます。

○ 地産地消による生産者の顔が見える安心した食べ物が食べられるまち

 多様な農産物が採れる地域の特徴を活かした地産地消のしくみが構築され、学校給食はもちろんのこと、生産者の顔が見える、安全性の高い、おいしい食べ物が町内でも幅広く流通し、一般家庭の食卓をにぎわしています。

多様な産業が花開くにぎわいのあるまち

○ 立地条件を活かした産業が発展するまち

 立地条件の良さに魅力を感じる工場や事業所が立地し、多くの雇用の場が創出され、人口の減少に歯止めがかかります。農業も地産地消の推進により安定した経営基盤が築かれています。また、隣接する千歳市や苫小牧市をはじめ、札幌都市圏や本州に、陸・海・空そしてインターネットなど情報通信網を通じて農産物や花きの販売が行われ、鮮度が良く、安全性の高い生産物をどこよりも早く供給することで、地域の基幹産業としてさらに発展しています。これまでのゴルフや牧場見学の観光だけでなく、温泉資源や豊かな自然環境を活かした体験型観光資源が整備されています。地域の特産品を活かした新たな名物や新たな地域イベントなども創出され、多くの観光客が訪れ、この地域を回遊しています。また、商業も就業者や観光客が増加することで活気づき、新たな店舗も進出するなど、多様な魅力が発揮されています。

○ 地域資源を活かした新たな事業が展開するまち

 町内の様々な産業や研究機関が交流する機会が作られ、連携・協力関係が強化されています。合併したことにより資源や人材などの幅が広がり、こうした連携・協力関係の中から、これまでにはない新たな製品・商品・アイデアが生み出され、新しい産業として発展しています。また、住民の多様なニーズに対応したサービス産業などについても支援策が充実し、多様な地域の人材が働ける雇用の場を創出しています。

住民一人ひとりが輝く元気のあるまち

○ 地域ぐるみで子どもたちを育てるまち

 保護者を対象とした子育て学級や育児サークルなどが充実し、幼少期から地域の中で子どもたちが見守られながら育つ環境が形成されています。また、自然とのふれあいや、世代間交流などを通じた人と人との結びつきの中から、子どもたちの生きる力を育てる地域性豊かな環境が整っています。学校教育についても、多様な体験や交流の中から、児童・生徒の一人ひとりの個性を見いだすきめ細かい教育が行われています。追分高等学校においても、ボランティア活動、英会話教育、各種資格取得のための学習など特色あるカリキュラムが組まれ、町内外から多くの生徒が通学しています。

○ 多様な自己実現機会のあるまち

 学校を卒業した後も、いつでも・どこでも・だれでも自分の興味に応じて様々な学習活動や文化・芸術活動、スポーツ活動が行えるよう公共施設を巡回する交通手段の確立や図書館やスポーツ施設の整備のほか、上級者から初心者まで習熟度に応じて参加できる各種学習講座、文化・芸術講座が開設されています。また、これら学習講座によって培ってきた様々な知識や技能を地域活動に活かすため、生涯学習人材バンクも整備されており、地域の歴史や文化が伝承されています。

活気あふれるコミュニティが支えるまち

○ 住民が主体的にまちづくりに参加するまち

 まちづくりに当たっては、計画段階から住民の意見が取り入れられるしくみがあり、住民と行政とが協働で行う体制が確立されています。また、地区を単位とした自治機能が強化され、地区内のまちづくりを自ら考え、行政の支援を得ながら活動するしくみが構築されています。地区では、それぞれの課題について、自分たちでできること、自分たちと行政とが協働で行うこと、行政にお願いすることの仕分けをし、行政との協議を重ねながら地区のまちづくりを進めています。また、こうしたしくみが定着することで、地区の環境美化や公共施設などの管理運営など、自分たちでできることは住民が主体的に行うようになっています。

○ 効率的・効果的なまちづくりが進むまち

 住民との役割分担によって負担の軽くなった行政は、まちづくりにおいて本当に必要な部分、今日的な課題への対応に人員と予算を集中できるようになり、効率的で効果的なまちづくりが進められるようになっています。


 
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