早来地区義務教育学校 ICT環境設計「チームラボ」プレゼンテーション

1つの空間に複数の機能を共存。
共創空間を実現するスマートスクールシステム。

(この内容は、2021年7月16日に行った、「安平町早来地区義務教育学校設置」の記者会見をもとに編集・執筆したものです。)

 この記事では、早来地区義務教育学校におけるICT環境設計を担っていただいているチームラボ株式会社様のプレゼンテーションをご紹介します。※スクロールと同時にプレゼンテーションを読み込みます。クリック後、拡大表示します。


プレゼンテーション内容

司会)チームラボ株式会社様には、ICT環境を活かしてこの学校で何を実現するか、日々ご提案いただいています。プレゼンターは、「チームラボ株式会社」取締役 堺様です。それでは、堺様よろしくお願いします。

(堺様プロフィール)


堺氏)はじめまして。チームラボの堺と申します。よろしくお願いします。
私共は、チームラボという会社をやらせて頂いています。チームラボは、デジタルアートやデジタルソリューションという、デジタルを使って皆さんに新しい体験を提供することを生業にしています。ICT環境設計というのは耳慣れない言葉だと思いますが、それってそもそもどういうことなのかというところからお話させて頂き、この義務教育学校にどう反映したのかということをお話させて頂きたいと思います。


堺氏)コンセプトとして、町の皆さんから出てきていることばです。
今回の義務教育学校は、町民の皆さんと共に創ることが一番大きなポイントだと思っています。「みんなの学校」「自分が世界と出会う場所」をコンセプトに、町と学校を分けず、一体の環境をつくります。その中で出てくる、共に創ると書いて「共創」というのが、未来に向けた重要なキーワードだと思ってます。チームラボ自身も色んな専門家が共創して新しいものを創っていくというのが基本的な考え方・創り方ですし、そこに未来があると思っています。色んなバックグラウンド・色んなスキル・色んな人達が集まって何かを共に創ったり、その過程を共有できることがとても重要だと思っています。


堺氏)「ICT環境設計って何?」と思われる方もいらっしゃるのではないでしょうか。ICTと空間はどう関係しているのか、イメージが難しいと思っていました。しかし、ICT・デジタルを使うことによって、ひとつの空間の中で色んな可能性が広がり、色んなことができるようになります。例えばこういったことがありますというところから、ご説明させて頂きたいと思います。


堺氏)「デジタル・ICTを使って何ができるようになったのか」をご説明します。それは、今までは1つの空間に1つの機能だったのを、複数の機能を共存させることができるようになりました。


堺氏)どういうことかと申しますと、今まではICTと言うと、バーチャルなスマホの中とかパソコンの中というイメージをお持ちかと思いますが、実は空間自体の意味も大きく変えることができます。今までであれば、空間と機能が1個になっていますが、


堺氏)ICTを活用することによって、ひとつの空間の中に色んな機能を持たせることができます。


堺氏)例えば、個人の家や別荘を民泊場所として誰でも貸し借りできるサービス「Airbnb(エアビーアンドビー)」はまさに、ICTを活用して、ひとつの空間に複数の機能を持たせた事例の一つです。。昔は、個人の家はあくまでも個人の家としての機能だけが備わっていました。それがAirbnbによって、ある時間は家であり、ある時間はホテルであると、使う人のニーズによって同じ空間をICTによって変えることができます。今までであれば、「ホテル」という場所と「家」という空間は完全に分けて造ります。なので、「ホテル用の部屋」と「家用の家」は物理的に分かれることになります。それが、ICTを使うことによって、物理的には一つの空間であっても、ある時間は家になり、ある時間はホテルになるということができるようになりました。
もうひとつ、個人で所有する車を使ってタクシーサービスが提供できる「Uber(ウーバー)」も同じ考え方です。ひとつの車あでも、ある時は自家用車として使い、ある時間はタクシーとしてお客様の移動をサポートするというようになります。車という空間自体も、自分専用の空間であり一般の方が利用できる空間にもできることがICTの良さなのかなと思ってます。


堺氏)ICTを使って、ひとつの空間に複数の機能をもたせる。この考え方は、冒頭で申し上げた「町と学校を分けず、一体の環境をつくる」という、新しい学校の目指すコンセプトを実現するために活かすことができます。


堺氏)今までであれば「音楽室は音楽室」、「美術室は美術室」、「家庭科室は家庭科室」という設計にして、物理的に空間を分けます。また、地域の方々のコミュニティセンターは、スタジオ・アトリエ・キッチン教室としてそれぞれ分けて設計し、物理的に箱として違う空間を作っていたという具合です。


堺氏)ICTを活用し、学校の「音楽室」としての機能と、コミュニティーセンターの「スタジオ」としての機能を、一つの空間に共存させる。美術室とアトリエ・家庭科室とキッチンも同様です。物理的には同じ空間であっても、生徒から見れば音楽室・美術室・家庭科室。いっぽう地域の方から見ればそこはスタジオであり、アトリエ、キッチン教室であると見ることができるんじゃないかと思いました。この発想をもとに、学校の中に地域住民と共有できる空間「学校共創空間」をつくり、時間帯によって生徒が授業で使用したり、地域住民の皆さんが自由に使ったりできるようにしようと思います。


堺氏)今までの考え方だと、地域住民の方が使用する空間と、生徒が使用する空間を、建屋ごと分けてこっちは地域の方々の場所、こっちは生徒の場所としていましたが、今回はICTを使うことによってそれを一体にして地域住民と生徒の距離を近くします。それによって、学校の中にいながら、生徒は地域住民の背中を直接見て、刺激を受けることができます。例えば、そこでおじさん、お兄さん、お姉さんがバンドをやっていたら、そこから自分も何かをやってみたいと思うことがあるかもしれません。アート活動をしている地域の方を見て、自分もクラフトをやってみたいと思うかもしれません。これまでの学校だと、生徒が日常の学校生活で、学校外の大人から刺激を受ける機会はありませんでした。それを、ICTを活用することによって、学校と地域のコミュニティセンターを1個にまとめ、の空間をシェアすることによって、今回の大きなテーマである「共創」を生み出すというのが、僕たちチームラボの一番のミッションです。セキュリティの問題も出てくるだろうと思っています。地域の方がどこまで入って来れるか。生徒をちゃんと守れるか。そこでまたICTが活用されると考えています。ちょうど真ん中のアトリエ・キッチンスタジオなどの共用部分の両側に電子カギが付いている構造になっています。児童・生徒が授業をしている間、地域の方はその空間に入って来れません。生徒が授業をしていない時に開放して、地域の方々に使って頂くようになります。カギが自動的に、その時間に応じて開いたり閉まったりすることによって、生徒が入れる場所と地域住民の方が入れる場所を、時間によって安全に区分けできることができます。


堺氏)例えば、このピンク部分は児童・生徒が使う部屋で、図工や家庭科の授業で学校が使います。赤いところのカギが掛かって地域側からは入れず、児童・生徒しか入ってこれません。それを、時間と連動して自動的にカギが開いたり閉まったりするということにICTを使っています。逆に言うとスタジオは学校側で使っていないので、インターネットなどから予約をすれば地域の方が使えるという形になります。


堺氏)こちらはアトリエだけ空いているので、ここだけは地域の方が使える状態となります。ただ、実際には本当に近い場所にいるので、教室からアトリエで何をやっているか見えますし、このフリースペース「光のプロムナード」は生徒がよく通るところなので、ここから常に地域の方が何をやっているか見えることになり、地域の方からも児童・生徒がどんなことをやっているか見えて、お互いに刺激しあえるような環境になっています。


堺氏)こういったものを、「スマートスクールシステム」と言っています。これは仮のデザインですが、地域の方がインターネット上から学校の中の施設を選び、予約をすることができるということを想定しています。


堺氏)実際に学校へ行くと、タブレット上に「○○さんが予約してます」と表示され、カギが自動的に開くということを想定しています。あくまでもデジタルはツールでしかなくて、目的としては「地域と児童・生徒が一緒に共創する」ことです。近くに居て、お互い何をやっているか知ることができて、そこから刺激を受けて新しい世界に飛び立っていくということを考えています。それを実現するために、こういったデジタルツールを使った環境設計というのをお手伝いさせて頂いています。以上が、今回、私共がやらせて頂いているICT環境設計の内容になります。


(プレゼンテーション終了)

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