第7回FP講座「住宅資金の考え方」

(制作:安平町 監修:ファイナンシャル・プランナー星 洋子氏)

 マイホーム購入についての相談で多いのが、①住宅ローンをいくらまで借りられるか、②購入時の諸費用はいくらかかるか、の二つです。
 この二つは資金計画として、購入前に必ず検討すべき事項です。そして私は、①住宅ローンは毎月いくらまで返せるか、②諸費用は購入後もかかる、というアドバイスをします。
 購入する前にしっかりとした計画を立てることで、20~30年に渡る長い期間のローンを払い続けることができます。ローンを完済してこそのマイホームです。


 

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住宅ローンの考え方

 住宅ローンを組むとき、借りる側と貸す側にはそれぞれの目安があります。貸す側、つまり金融機関の一つの目安として「返済負担率」があります。借りる側の目安は「無理なく毎月返せる金額」です。この二つは計算方法が違います。
 

返済負担率

 年収に対する住宅ローンの比率のことです。
 返済負担率の計算 『住宅ローンの年間返済額 / 年収×100』

 例えば、年収500万円、住宅ローンの年間総返済額が120万円なら
 120万 / 500万×100=24%

 この返済負担率は金融機関が融資を決めるときの基準の一つですが、金融機関ごとの基準があります。他に借り入れているローン(マイカーローンなど)がある場合は年間返済額に含めて計算します。

返済負担率の範囲の一例

前年の税込み年収 返済負担率
400万円未満 35%以内
600万円未満 40%以内
600万円以上 45%以内

無理なく返せる金額

 年収に対する住宅ローンの比率のことです。
 上記の返済負担率は金融機関側の目安ですから、この目安とは別に我が家の目安が必要です。

 我が家の目安とは「無理なく返せる金額」、普段の生活をしながら毎月、住宅ローンをコツコツと返済できるかどうかの計算です。

 『現在の家賃 / 月』+『住宅購入のための貯蓄額 / 月』-『購入後の諸費用・維持費』 = 無理なく返せる金額

 例えば、現在の家賃9万円、毎月の住宅購入のための貯蓄額3万円、購入後の維持費2万円なら、9万+3万-2万=10万円

 つまりマイホーム購入後は維持費などもかかるので、それも含めて予算しましょうという計算です。

 金融機関の各サイトでは「住宅ローンシミュレーション」があります。上記の無理なく返せる金額、期間、金利などを入力すると借入額を試算できます。

返済期間別の概算借入額の一例(金利1%の場合)

返済額/月※1 20年 25年 30年
5万円 1090万円 1330万円 1550万円
6万円 1300万円 1600万円 1870万円
7万円 1520万円 1860万円 2180万円
8万円 1740万円 2120万円 2490万円
9万円 1960万円 2390万円 2800万円
※1返済額10万円以上の試算は、上記表の各行を2倍すると概算額を試算できます。

諸費用と頭金

諸費用はずっとかかる

 住宅を購入するときは、物件(土地、建物)価格の他に諸費用がかかります。また、前述の通り購入後は維持費が発生します。これらは賃貸物件ではかからない費用ですし、購入後の費用に関しては住宅ローンを払い終わってもずっとかかります

購入時 購入後
税金等(登録免許税、印紙税、不動産取得税)、登記費用、ローン手数料、火災保険料など 固定資産税、火災保険料、修繕費、リフォーム代、管理費・駐車場代(マンション)など

頭金は必要

 購入時の諸費用の目安は物件価格の5~10%程度です。この分の現金を用意する必要があります。
 さらに住宅ローンを組む時の頭金も用意すべきです。金融機関によっては頭金無しの住宅ローンもありますが、多く借りるほど支払い利息が増えます。購入後の諸費用も考えると、頭金を用意し住宅ローンを少なくしたほうが安心です。

 

マイホーム購入時の優遇制度

マイホーム購入時には、いろいろとお得になる制度があります。

多くの制度は、まとまった額の税金の控除や助成金がもらえますから、そのまま頭金に充てたり、購入後の生活費の助けにしたりと、たいへん助かります。
人生の中で一番高い買い物と言われる住宅だからこそ、これらの制度を上手く利用しましょう。
 

主な税制上の優遇制度

 

住宅借入金等特別控除
(住宅ローン減税)
住宅ローン年末残高等※1の1%を10年間※2、各年の所得税額から控除。控除しきれない分は翌年の住民税から控除(限度額有り)
国税庁
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1213.htm
住宅取得の際の贈与税の特例 直系尊属から住宅取得等のための金銭の贈与が非課税
国税庁
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4508.htm

※1 国などからの補助金等や住宅取得等資金の贈与の特例を受ける場合はその額を控除します。
※2 消費税増税後のマイホーム取得時(2019年10月1日~2020年12月31日)は、さらに11年目から13年目まで特別の控除があります(特別特定取得)

 「すまい給付金」国土交通省 http://sumai-kyufu.jp/
 消費税増税による負担を軽減するための制度です。2021年12月末までの制度で、収入が一定以下の場合、下記の給付金がもらえます。

『すまい給付金の収入の目安(住宅ローンを利用する場合※1)』
収入額の目安※2 給付基礎額※3
450万円以下 50万円
450万円超525万円以下 40万円
525万円超600万円以下 30万円
600万円超675万円以下 20万円
675万円超775万円以下 10万円
※1 住宅ローンを利用しない場合(現金で取得)、収入の目安は650万円以下、年齢は50歳以上が対象となります。
※2 実際には住民税の所得割額で決定します。
※3 給付基礎額に持分割合(登記事項証明書で確認)を乗じた額が給付額になります。
 

安平町の住宅関係の主な制度

①長期優良住宅建設助成金    町が分譲している区画で、建設業の許可を有する建設業者による長期優良住宅を建設したときに建設業者が申請。
「町営若草団地」330万円、「ラ・ラ・タウンおいわけ」「アイリスタウン」250万円
※本件は上記に該当する建築業者に支払われるものになり建築主には間接的に助成される制度となります。直接建築主には、上記金額が支払われるものではありません。
https://www.town.abira.lg.jp//webopen/info/file_1_5994_1.pdf
②住宅建設奨励助成金    町内で利用できる町商品券 上記の分譲地に住宅建設・新築住宅を購入した場合、20万円分
上記の分譲地以外の場合、10万円分
また町外からの転入の場合、上記の制度と合わせて下記の助成金も申請可能です。
③転入奨励
助成金
町内で使用できる町商品券
上記の分譲地に住宅建設・新築住宅を購入した場合、20万円分
上記の分譲地以外の場合、10万円分
④転校準備
助成金
 町内で使用できる町商品券
上記③に当てはまり、安平町の小中学校に通う子がいる世帯に10万円分

②~④は定住促進条例
https://www.town.abira.lg.jp/gyosei/reiki/reiki_honbun/u323RG00000093.html

 この他にも安平町住宅リフォーム助成制度、空き地活用住宅建設助成金制度があります。
⑤安平町住宅リフォーム助成制度    助成基本額:リフォーム対象工事費の1/2(上限有り) 子育て加算:子1人当たり10万円など(上限有り)
https://www.town.abira.lg.jp//webopen/info/11745/01.pdf
⑥空き地活用住宅建設助成金制度 現金20万円
震災により半壊以上の住宅を公費解体若しくは自費解体し更地となった土地を購入し住宅を建設する方に対して、現金20万円を支給
https://www.town.abira.lg.jp//webopen/info/11806/akichi1.pdf
 

住宅資金の考え方:まとめ

 住宅資金は「住宅ローンは無理なく毎月返せる額」と、「諸費用はずっとかかる」ことを考えて計画を立てましょう。
 そして最後に。緊急時や万が一のためのお金の準備も忘れずに。今回のコロナ禍で家計へのダメージは相当なものです。特に家賃や住宅ローンなどの住居費は家計に占める割合が高いため、収入減が続くと払えなくなる危険があります。
 住宅ローンを払えないとマイホームを手放すことになります。そうしないためにも、少なくとも手取り額の半年分くらいのお金を準備して、いつでも引き出せるようにしておきましょう。


 
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