第2回FP講座「教育資金計画」

(制作:安平町 監修:ファイナンシャル・プランナー星 洋子氏)

 町では、特別企画「子育て世代応援プロジェクト」として、ファイナンシャル・プランナー 星 洋子氏によるWEB版FP講座を開始します。第2回は「教育資金計画」です。教育にかかる費用をどのように考えたらよいのか、教育資金を計画する時のポイント、国の制度などをご案内いたします。
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教育資金計画の考え方

 子どもにかかる教育費は下記のようなものがあります。

 ・幼稚園や保育園の利用料や諸費用
 ・ピアノやスイミング教室などの習い事の月謝や諸費用
 ・小中学校在学中の費用(教材費や給食費、制服、ジャージや運動靴など)
 ・高校の授業料(高等学校等就学支援金制度有り)や教材費、通学費用、部活費用など
 ・塾の月謝代や模擬試験の費用、受験費用など
 ・大学・短大、専門学校などの高等教育を受ける場合の進学諸費用

 上記の教育費のうち高校までの教育費は、毎月定額でかかる費用が多いため、やりくりは大変ですが、生活費の中の項目の一つの教育費として管理できます。

 一方で大学などへの進学費用は毎月というよりは、一時的にまとまったお金が必要になることが多く、総額も大きな額になります。そのため、長期的な資金計画が必要です。

 例えば合格後の入学手続時には、入学金と前期分の授業料や諸費用を納めます。入学後も大学などは授業料を半年ごとに納めるのが一般的ですから、半年ごとにまとまったお金が必要です。

 ちなみに入学した1年目に、進学先の学校に納付する入学金や授業料、諸費用(施設設備費など)の合計は、全国の私立大学の平均で文系が約117万円、理系が約154万円です。(文部科学省「私立大学等の平成29年度入学者に係る学生納付金等調査結果」より)
 次年度以降も授業料などを納付し続けた場合、4年間の納付合計額は、文系が約400万円、理系は約540万円になります。

 さらに自宅を出て1人暮らしとなると、入学前に住居を探す費用(交通費、敷金・礼金など)や、家具家電を購入する費用がかかります。暮らす地域(都市部か地方か)や形態(学生寮かアパートか)にもよりますが、30~50万円くらいは見ておいた方がよろしいでしょう。
 加えて家賃や光熱費などの生活費が家族とは別にかかるため、定期的な仕送りが必要です。

 以上のように、進学費用は高校までの教育費とは支出額も支出形態も異なるため、毎月の生活費で管理することが困難になります。
 そのために高校までの教育費とは別に資金計画が必要になります。ここからは進学費用のための教育資金計画についてご案内いたします。

教育資金の貯め時

 貯め時はズバリ、子どもが誕生してから小学生までの間です。理由は3つあります。

 1)児童手当がある
 児童手当は0歳~中学校修了までもらえます。
 安平町 児童手当※該当ページに移動します。

 一般的な所得の世帯の場合、仮に第1子の児童手当を全て貯めると約200万円になります。

 2)幼稚園・保育園・認定保育園の利用料が3歳から無料
 今年度から「幼児教育・保育の無償化」がスタートしました。住民税非課税世帯は0歳から対象になります。毎月かかっていた利用料が不要(上限あり)になるのですから、子育て世代にはたいへんありがたい制度です。
 内閣府※該当ページに移動します。

 仮に、毎月の利用料が2.5万円だったとし、3歳から5歳まで3年間の保育料を払ったつもりで貯めると90万円になります。その間に働いてパート収入を得ることも可能になります。

 3)中学生になると塾費用がかかってくる
 上記の児童手当は中学3年生までもらえますが、中学生になると部活費や塾代が思った以上にかかってきます。中学でかかるこれらの費用については毎月の生活費で賄えるよう、子どもが小学生までの間に貯蓄に回す癖をつけます。

 1)~3)を全て実行した場合、400万円以上を貯めることができます。(下表参照)
 
方法 貯める時期 概算合計額 備考
1)児童手当を貯める 0歳~中学3年まで 200万円 第1子・所得制限無
2)幼稚園利用料を貯める 3歳~5歳まで 90万円 2.5万円/月
3)塾費用を貯める 0歳~小学校6年まで 144万円 1万円/月
 

進学資金はいくら必要か

 例えば上記を実行し400万円貯めた場合、一般的な私立大学の授業料などに充てることができます。しかし進学するには、授業料の他に教材費や通学費、学生本人の生活費などもかかるので、それだけでは足りません。

 実際に4年制大学に進学した大学生の収入状況の調査結果では、家庭からの収入が約6割で、残りの4割は学生本人が奨学金を利用したり、アルバイトなどで補うというのが現状です。(日本学生支援機構「2016年度学生生活調査結果」より)
 いずれにせよ、学校に納入する授業料などは最低限必要ですから、この分を目標にしてなるべく早くからコツコツと準備しましょう。
 

金融商品の利用方法

 せっかく貯める気になっても、貯めたお金を生活費口座(普通預金)にそのままにしていてはなかなか貯まりません。なぜなら毎月入ってくる収入(給与)と、貯めた分が同じ口座に入ったままだと結局いくら貯まっているのか、分からなくなるからです。
 しっかりと貯めるには、生活費口座とは別にすることです。そのためには金融商品を上手に利用しましょう。
 教育資金のための主な金融商品は、その商品の特徴から3種類あります。
 
商品 特徴
預貯金 銀行の積立預金など 元本保証だが利回りはかなり低い
保険商品 学資保険・終身保険などの貯蓄性商品 中途解約時は元本割れもある
投資商品 つみたてNISA、ジュニアNISA 元本保証無し
 預貯金や保険商品は、満期まで頑張れば確実に貯まります。ただし、どちらも現在、利回りはたいへん低いので受取りが10年以上先の場合、インフレリスクに気を付ける必要があります。
 保険商品は中途解約の時期によっては元本割れしますが、それをふまえたうえで解約せずに最後まで続けるという強制力があります。
 投資商品は元本保証がない反面、高い利回りが期待できますが、安定した値動きで運用するために、ある程度の運用期間が必要です。
 つみたてNISAやジュニアNISAは、運用収益が非課税になるため、より効率よく運用できます。
 金融庁
 つみたてNISA ※該当ページに移動します。
 ジュニアNISA※該当ページに移動します。
 これらの金融商品は特徴をよく理解したうえで、複数の種類を組み合わせるとよいでしょう。
 

教育資金計画のまとめ

 進学するには多額の費用が卒業するまでかかりますし、それを急に一度に用意するのは不可能です。しかし、子どもが誕生してから実際に進学するまでには約18年という長い年月があります。この長い期間と、国の制度などを最大限に利用してコツコツと貯めましょう。
 うちはもう中学生だから遅い・・などとあきらめずに今日から何か一つからでも始めることが大事です。
 我が子は生まれたばかり、18年後に進学するかどうかは全くわからない・・とも思ってしまいますよね。しかし現在、大学・短大・専門学校への進学率は81.5%(文部科学省「平成30年度学校基本調査」より)です。「もしかするとうちの子も進学するかもしれない」と考えることも必要です。
 進学しなかったとしても、それまで一生懸命に貯めたお金は、保護者の老後の備えにできます。決して無駄にはなりません。

 次回は奨学金と高等教育の無償化についてです。

 
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